2011年に週刊誌の記者が自著の出版記念講演で発言した朴正煕元大統領に関する話の内容が「真実だと信じるに足りる証拠はない」とし、裁判所が遺族への精神的損害を金銭で償うことを命ずる判決があったそうです。韓国メディアが伝えていました。
時事INのチュ・ジンウ記者は、2011年10月に韓国プレスセンターで開かれた「朴正煕の素顔」という本の出版記念講演で、「大学生とか自分の娘ほどの女を抱こうとして、夜中に性上納を受けながら銃で射殺された独裁者はどこにもいない」「(朴元大統領が子供たちに)残した財産はとてつもなく多い。育英財団もあり、嶺南大学もあり、正修奨学会もあり・・・それがだいたい10兆ウォン残しました。今売ると10億兆ウォンを越えるけど・・・」と発言。これに対し、朴元大統領の息子であるパク・ジマン氏が民事裁判を起し、3億ウォンの損害賠償を求めていたそうです。
そして16日に、その民事訴訟の判決がソウル地裁であったとのことですが、原告であるパク氏の一部勝訴の判決が下り、500万ウォンの賠償命令が下ったとか。
裁判所の判断は「チュ氏の発言内容が真実であるとか真実だと信じるだけの相当な理由があるとみる証拠がない限り、損害賠償責任を免れることができない」、「政治家や元大統領の場合、事後業績や業績への批判は許されなければならないが、事実を歪曲したり、虚偽の事実、敵視によって故人や遺族の人格権を侵害してはならない」というものでした。
具体的に、裁判所がチュ記者の発言がどのように事実でなかったかの判断を下したかについては、以下のように16日付のオーマイニュースが紹介していました。
問題発言の最初は、1979年の10.26事件当時、宮井洞の安家の宴会についてチュ記者が「大学生とか自分の娘ほどの女を抱こうとして、夜中に性上納を受けながら銃で射殺された独裁者はどこにもいない」と発言した部分である。裁判所は、 「金載圭などの裁判の過程で明らかになった内容と、それに対するメディアの報道と関係者の著述などを介して、当該宴会場の特徴は、上記宴会場で性接待がおこなわれているか、または上の宴会が性上納のための集まりであることを認める材料を見つけるのは難しい」と判断した。
また問題になったの記者の発言は、「(朴元大統領が子供たちに)残した財産はとてつもなく多い。育英財団もあり、嶺南大学もあり、正修奨学会もあり・・・それがだいたい10兆ウォン残しました。今売ると10億兆ウォンを越えるけど・・・」とした部分です。裁判所は「財産を残した」という表現は、財産を遺産として子供たちに継承しているという意味を持つのに、財団法人や学校法人は、各民法と私立学校法に基づいて設置されている法人として個人とは別個の法人格を持つため、その所有財産を設立者の財産とみることができない」とし、「育英財団、正修奨学会、嶺南学園は故人が不正蓄財をして残した遺産であるかのように断定的に表現し、単純に故人の子供たちが各法人の運営に関与したという事実を誇張したものを超えて、虚偽の事実を指摘した場合に該当する」と判断した。
1964年、朴正煕大統領が西ドイツを訪問した際について、記者が「朴大統領はリュプケ西ドイツ大統領に会えなかった」と発言したことについて、裁判所は、「 故人(朴元大統領)が西ドイツを訪問し、西ドイツのリュプケ大統領と対談し、勲章の授与を受け、歓迎の夕食会の招待を受けたことは、当時の新聞報道やニュース動画などで確認が可能だ」と指摘した。まず朴元大統領の「性上納」に関して、「上の宴会が性上納のための集まりであることを認める材料を見つけるのは難しい」とした部分は、当該の宴会が「大行事」という単なる宴席であって、「少行事」と呼ばれる「性上納」ではなかった可能性が高いので妥当でしょうけれども、朴元大統領が「性上納を受け」ていたということを「真実だと信じるだけの相当な」具体的な証言は存在します(韓国の大統領専用慰安所参照)。
また「(朴元大統領が子供たちに)残した財産」については、軍事政権が1961年の5・16クーデター直後に、釜山のキム・ジテ氏から釜山日報と文化放送の株式を保有していた奨学会を強奪。紆余曲折の末にパク・クネ氏(現大統領)が1995年に奨学会の理事長に就任していましたが、朴元大統領が子供たちに「育英財団、正修奨学会、嶺南学園」を残そうと画策したとする具体的な証拠はなく、当該団体の資産価値が10億ウォンになるのかもわかりません。
「朴大統領はリュプケ西ドイツ大統領に会えなかった」は、具体的な証拠から完全に事実ではないと言えるのでしょう。
チュ記者は、大統領選挙でパク・クネ氏を落選させる意図があって、このような発言をしたのではないかとみられています。
チュ記者は、虚偽の事実を流布した疑い(公職選挙法違反)でも刑事告訴されており、その裁判が今月の22日と23日に国民参加裁判でおこなわれるようですが、今回の民事判決が当該の裁判の判決に影響を与えるのではないかとの観測もでています。