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2013年2月12日火曜日

大渓島干拓は北朝鮮の食糧難を解決できるのか



2010年7月16日の朝鮮中央テレビは、金正日が北朝鮮平安北道の塩州郡と鉄山郡にまたがる8800ヘクタールの大渓島干拓地と鴨禄江水産事業所を視察し、現地指導をおこなったと伝えていました。

金正日は干拓事業が成功裡に竣工したことに極めて満足し、北朝鮮の食糧問題を解決するためには、当面すべての力を集中し、耕地面積を広げるため、引き続き全力で砂浜を開墾しなければならないと述べたといいます。

けれども北朝鮮の場合は、外貨不足から石油や電力などのエネルギーが輸入できないことや、肥料や農薬の調達、農機の導入などが難しいことから、干拓によって耕地を増やしたとしても、それだけでは食糧不足の解消にはならないことは明らかでしょう。

北朝鮮の食糧難は、耕地が少ないことが原因なのではなく、主体農法と国家体制の構造が原因なのです。

大渓島干拓地には、金正日の提案で塩田や養魚場が造られたといいます。これも、耕地にするはずの工事が予想以上に大変だったために、干拓の事業規模を縮小したとみるのが妥当でしょう。

この地域は、北朝鮮も認めていますが、自然災害が何度もあった場所です。韓国教員大学のイ・ミンブ教授チームによると、米国の商業人工衛星ランドサットETMの映像資料では、大渓島干拓地の防潮堤は99年までは崩れていなかったのが、2001年9月の写真では干拓地に海水が入り、海に戻ってしまっていたようです(中央日報より、衛星写真の資料あり)。

大渓島干拓地の防波堤は資材不足なのか、波打ち際に置く消波ブロック(いわゆるテトラポット)は岩で、通常はコンクリート製の直立壁も、石を積み上げたウリ(われわれ)式の防波堤のようです。このような防波堤では、津波などの大規模な波浪被害から干拓地を守ることはできません。また北朝鮮の塩害に対する技術も未知数です。

このままでは、せっかく開墾した耕地がふたたび海に戻ったり、荒れ野になる可能性が大いにあります。文字通り、すべてが水の泡と化し、失敗した社会工学の残骸がまたひとつ増えることになります。科学的根拠もなく、無能な指導者の思いつきから実行された壮大な事業で、北朝鮮の人民経済は今以上に疲弊するかもしれません。